それでは,自らの具体的な体験が伴った,すなわち出来事に共感•共鳴し,その出来事と一体化したことばの体験を,ロシア語の授業という限られた時間とスペースの中でどのようにデザインすることができるでしょうか.それは,学習者がロシア語を実際に使って主体的に体験する活動が実現されている授業であり,そこで「生きたことば」が使われるには,当然出来事•活動そのものも生き生きとした現実のものでなければならないでしょう.
そこで,このサイトでは,ユニットや教案の開発にあたって,まず1)「生きたロシア語」の素材として,生の(=ロシア語話者に向けて書かれた)テクストを積極的に用いること,2)ロシア語で実際に体験する出来事や活動の内容を重視すること,を提案しています(e.g., Brinton et. al, 1989; Met, 1991).このような言語面と内容面両面を有機的に統合して扱う内容重視型の第2言語教育アプローチとしては,北米のContent-based instructionや欧州のContent and language integrated learningが最も広く知られています.このサイトでご紹介しているユニットや教案の大まかな開発の流れは下記の通りです:
言語到達度基準 (CEFR, ТРКИなど) を参照して,到達度目標を設定する.
設定した到達度目標を参照しながら生のテクストを選び,内容面と言語面でユニット全体の目標を設定する
内容と言語の両面を評価に含める
形成的評価と総括的評価の両方を効果的に取り入れる
目的を言語面、内容面で具体的に明示する
3つのコミュニケーションモード(理解/対人/提示モード)をバランスよく、効果的に用いた活動を計画する
グラフィックオーガナイザーなどを活用しながら,より高次の思考を促すような活動をデザインする
(言語面•内容面両面で)学習者が何をどのように学ぶ/習得するのか記述されているか.
授業で導入される語彙と文法項目は網羅されているか.
目標が達成できているかどうか言語面、内容面の評価ができるようにデザインされているか.
(言語面•内容面両面で)学習者が何をどのように学ぶ/習得するのか,具体的に記述されているか.
各活動がどの目標に対応しているのか,明記されているか.
比較,分析といったより高次の思考を促すような活動が含まれているか.
コミュニケーションモード(解釈/対人/提示)を用いる活動がバランスよく含まれているか.
(横井幸子)